聴き手のいない合唱音楽2007/01/07 22:39

昨年の12月、東混の定期が土曜日だったので、久しぶりに聞きに行ってきました。プログラムが地味だったせいもあって、お客様がすごく少なかった。東混の定期に行き始めてから、かれこれ25年以上になるし、その多くの定期が満員にはほど遠かったから、今さら慌てることでもないのだろう。まぁ、これが現在の合唱音楽のマーケットを表しているなぁと感じた。
 そんなことないでしょ。アマチュアの有名合唱団の演奏会は満員に近いしよって言われるけど、そりゃそうでしょ。団員の友人、知人、などなどが聞きにやってくるし、それ以外でもどんな演奏するかとか、今度の委嘱曲のできばえはどうかとか、来年の演奏会にのせる曲でいいのがないかとか、そういう聴き手が大部分のような気がする。でもそれは日本だけの状況じゃなくて、世界的にそうらしい。ハーモニーの対談で松原千振さんがいっていたからたぶんそう。合唱王国(と思われている)スウェーデンだって全然お客が入らないらしい。
 曲を提供する作曲家がして、それを演奏する演奏家がいて、でもそれを聴く聴衆がいない。昨年の京都の世界合唱の祭典だって、合唱をやらない人の間ではなにもなかったも同然だし、合唱をやっている人の間でも話題にならないことが多いような気がする。あれはやっぱり一部の合唱オタクのためのものだったのね。(それと合唱を職業とする人たちのための)
 と漠然と思っているうちに年が明け、ちょっと時間的余裕ができたので、昨年から聴こうと思っていた韓国の1998年の合唱祭の録音を聴きました。実は韓国の合唱事情を全然知らなかったので、聴き始める前まではまったく期待していなかっただけでなく、発声とか大丈夫かななって思っていたけど、素晴らしかった。ルネッサンス期の曲の演奏はちょっとロマン派な味付けになっていた合唱団があったけど、発生も立派だし、ハーモニーも立派。特に感動したのはUlsan City Choirの演奏したバッハのモテット。バッハのモテットって難しいじゃないですか。東混でも生で聴いたし、コンクールの全国大会で金賞を取った団の演奏も生で聴いたけど、それまで聞いた中ではやはりドイツのどこかの放送合唱団の来日公演で聴いたものが自分のなかでは一番良かった。今回の韓国の合唱団の演奏は生ではなく録音なので、単純な比較はできないけど、素晴らしい演奏でした。技術が確かなだけじゃなくて、演奏に力があるんです。(力が入っているってことじゃないよ)
 実は、このCDを聞く前に、昨年のNHK音楽コンクールの高校の部と、全日本合唱コンクールの高校の部のCDを聴いてたんです。上手いんですよ。難曲を一糸乱れぬ演奏で聞かせて、これはものすごい努力だなと。でも聞いていて全然楽しくないし、気持ちよくない。コンクールだから聴衆なんて相手にしてなくて、審査員しか目に入っていないということもあるんだろうけど。演奏も線が細いし、日本の新しい合唱曲も線が細い。もちろんコンクールをもってして、日本の合唱音楽の全体を語るのは間違っているというのはわかるんですけどね。やっぱ合唱音楽って身内の中だけのものなのねなんて思っていたので、韓国の合唱CDはちょっとうれしかった。
 ただCDのクレジットで曲名は英語とハングル、作曲家はハングルでしか表記されていないので、知らない曲は調べようがない。ハングルを勉強しようかな。