坂本龍一さんがお亡くなりになりました ― 2023/04/16 13:41
坂本龍一さんが先月お亡くなりになりました。がんで闘病していることを公表しておりましたね。私自身も癌になり、現在は手術後4年目の経過観察中ですので、坂本さんの話しを聞くにふれ、なんとか進行しないでほしい、頑張っていただきたいと思っておりましたから、非常に残念です。
ところで私にとって坂本龍一さんとは、YMOのメンバーであり、教授であることからスタートしました。そして、戦場のメリークリスマス(1983年日本公開)で音楽を担当するとともに俳優として出演されたり、その後、音楽家として活動しながら、東北ユースオーケストラの活動や、『さようなら原発』一千万人署名市民の会」の呼びかけ人になるなど、市民運動にもかかわりを持つようになったと思います。
ところで、合唱とのかかわりはいうと、1982年東混委嘱による「小説」が発表されました。村上龍さんオリジナルのテキストをほぼほぼ合唱団員が読む形ですすみ、最後近くになって、坂本さん自身のピアノ(多分即興)が入ったものでした。クラシック系音楽雑誌のコンサート評では酷評されていましたが、私自身はおもしろいなと思いましたね。
以下はその時のコンサートプログラムに寄せた坂本さん自身の言葉の一部です。
(前略) このテキストは団員の皆さんに。「読みずらい」、「嫌悪をもよおす」、「何の意味があるのだ」等の反応をひきおこしました。ある意味では当然ですが、別の意味ではこう思われます。例えば「いやらしい」は言葉として何のいやらしさもありません。その証拠に日本語の判らないフランス人に言ってみて下さい。多分なぐられたりはしないでしょう。言葉とは。その言語が流通している共同体のものであり、その共同体とは僕達一人一人の共同性なんだと思います。ぎくしゃくしながらしゃべるのもまたおもしろいのでは…。」 (下線筆者) <東京混声合唱団第90回定期演奏会プログラムより転載>
意図がうまくいったかどうかは別として「言葉の問題」に切り込もうとした作品であったと思います。
さてここで紹介するのは第7回世界合唱シンポジウムのために合唱連盟が委嘱した "Cantus omnibus unus" です。
謹んでご冥福をお祈りいたします。
ところで私にとって坂本龍一さんとは、YMOのメンバーであり、教授であることからスタートしました。そして、戦場のメリークリスマス(1983年日本公開)で音楽を担当するとともに俳優として出演されたり、その後、音楽家として活動しながら、東北ユースオーケストラの活動や、『さようなら原発』一千万人署名市民の会」の呼びかけ人になるなど、市民運動にもかかわりを持つようになったと思います。
ところで、合唱とのかかわりはいうと、1982年東混委嘱による「小説」が発表されました。村上龍さんオリジナルのテキストをほぼほぼ合唱団員が読む形ですすみ、最後近くになって、坂本さん自身のピアノ(多分即興)が入ったものでした。クラシック系音楽雑誌のコンサート評では酷評されていましたが、私自身はおもしろいなと思いましたね。
以下はその時のコンサートプログラムに寄せた坂本さん自身の言葉の一部です。
(前略) このテキストは団員の皆さんに。「読みずらい」、「嫌悪をもよおす」、「何の意味があるのだ」等の反応をひきおこしました。ある意味では当然ですが、別の意味ではこう思われます。例えば「いやらしい」は言葉として何のいやらしさもありません。その証拠に日本語の判らないフランス人に言ってみて下さい。多分なぐられたりはしないでしょう。言葉とは。その言語が流通している共同体のものであり、その共同体とは僕達一人一人の共同性なんだと思います。ぎくしゃくしながらしゃべるのもまたおもしろいのでは…。」 (下線筆者) <東京混声合唱団第90回定期演奏会プログラムより転載>
意図がうまくいったかどうかは別として「言葉の問題」に切り込もうとした作品であったと思います。
さてここで紹介するのは第7回世界合唱シンポジウムのために合唱連盟が委嘱した "Cantus omnibus unus" です。
謹んでご冥福をお祈りいたします。
Dan Forrest さんの "Good noght, Dear Heart" ― 2023/03/21 10:21
男声合唱をやっている友人から、こんな感じの男声合唱曲ってないかなと教えてもらった曲が、Dan Forrest さんの "Good Night, Dear Heart"です。
楽譜を見ながら演奏が聴けるYoutubeは下記です。
ゆったりとしたテンポの美しい曲です。ただこの曲にはすべてのパートに一切変位音(#や♭)がありません。だからと言って古臭い感じはないんです。主三和音に9thの音が足されていたり、メロディーに半音で内声がぶつかったり、フレーズに終わりが属和音の7th sus4 和音で終わっていて、そのsus4音が導音に移行せずに次のフレーズで主和音から始まるなど、工夫されています。
Dan Forrest さんにとっても、この曲はヒットした曲なようで、混声は無伴奏でも、ピアノをつけても演奏出来て、ピアノ付きの女声や男声のバージョンもあります。吹奏楽のバージョンもあります。
個人の感想ですが、無伴奏の混声版が一番良くて、ピアノ伴奏が付くとなんだか通俗的な感じがしてしまいます。
出版は Hinshaw Music。
ゆったりとしたテンポの美しい曲です。ただこの曲にはすべてのパートに一切変位音(#や♭)がありません。だからと言って古臭い感じはないんです。主三和音に9thの音が足されていたり、メロディーに半音で内声がぶつかったり、フレーズに終わりが属和音の7th sus4 和音で終わっていて、そのsus4音が導音に移行せずに次のフレーズで主和音から始まるなど、工夫されています。
Dan Forrest さんにとっても、この曲はヒットした曲なようで、混声は無伴奏でも、ピアノをつけても演奏出来て、ピアノ付きの女声や男声のバージョンもあります。吹奏楽のバージョンもあります。
個人の感想ですが、無伴奏の混声版が一番良くて、ピアノ伴奏が付くとなんだか通俗的な感じがしてしまいます。
出版は Hinshaw Music。
ウクライナ侵攻 1年 ― 2023/02/24 22:25
ウクライナ侵攻が始まってから1年経ちました。
ムソルグスキーの展覧会の絵 終曲の「キエフの大門」がロシアではなくウクライナの都市だったなんて。それもキエフはロシア語で、ウクライナ語では「キーウ」というんだって。遠い国の話で知らないことがいっぱいありました。
テレビやラジオで関連する番組が放送されました。
自分が聞いたなかで、TBSラジオの荻上チキ Sessionにゲストで出演した金井真紀さんの言葉(入管法改悪に関する話として)「自分も、軍隊に入れば敵を殺せるようになるし、入管の職員になれば外国人を軽んじるのが当たり前になる。…人間は組織にいたらそうなってしまう生き物なんだ」
NHK R1 のジャーナルクロスで、キーウで被災者支援を行っているウクライナ人の方の話(日本でロシアレストランを開業している母娘がウクライナ人を雇って支援している話に対して)「すごくいい、うれしいエピソードだと感じますますが、一方で現地にいて毎日ミサイル攻撃があっていつ死ぬかわからない状況では、安全なところでウクライナ人と仲良くしたいという気持ちは軽いものと感じる。自分の命がいつ奪われるかという状況に置かれればまた違った意見が言えるようになるかもというのが本音」という話もありました。
思い言葉だなぁ。でも何もしないよりは、自分の頭で考えて、やりたいと思ったことをやるしかないのですね。
放送の抜粋だけではお話しされた方の真意が伝わらないので、ぜひ タイムフリー "荻上チキ Session" や 聞き逃しサービス "ジャーナルクロス" で全部を聞いてみてください。どちらも聞けるのは本放送から一週間までなので3/3までです。
さて、Silvestrovさんの"Prayer for the Ukraine" (ウクライナへの祈り)を聞きましょう。演奏はキーウの合唱団です。
出版はBelaieff。
ムソルグスキーの展覧会の絵 終曲の「キエフの大門」がロシアではなくウクライナの都市だったなんて。それもキエフはロシア語で、ウクライナ語では「キーウ」というんだって。遠い国の話で知らないことがいっぱいありました。
テレビやラジオで関連する番組が放送されました。
自分が聞いたなかで、TBSラジオの荻上チキ Sessionにゲストで出演した金井真紀さんの言葉(入管法改悪に関する話として)「自分も、軍隊に入れば敵を殺せるようになるし、入管の職員になれば外国人を軽んじるのが当たり前になる。…人間は組織にいたらそうなってしまう生き物なんだ」
NHK R1 のジャーナルクロスで、キーウで被災者支援を行っているウクライナ人の方の話(日本でロシアレストランを開業している母娘がウクライナ人を雇って支援している話に対して)「すごくいい、うれしいエピソードだと感じますますが、一方で現地にいて毎日ミサイル攻撃があっていつ死ぬかわからない状況では、安全なところでウクライナ人と仲良くしたいという気持ちは軽いものと感じる。自分の命がいつ奪われるかという状況に置かれればまた違った意見が言えるようになるかもというのが本音」という話もありました。
思い言葉だなぁ。でも何もしないよりは、自分の頭で考えて、やりたいと思ったことをやるしかないのですね。
放送の抜粋だけではお話しされた方の真意が伝わらないので、ぜひ タイムフリー "荻上チキ Session" や 聞き逃しサービス "ジャーナルクロス" で全部を聞いてみてください。どちらも聞けるのは本放送から一週間までなので3/3までです。
さて、Silvestrovさんの"Prayer for the Ukraine" (ウクライナへの祈り)を聞きましょう。演奏はキーウの合唱団です。
出版はBelaieff。
U boj (ウボイ) ― 2023/02/19 10:23
日本で男声合唱をやったことのある、ある程度年齢のいった方ならおそらく誰でも知っている、また歌ったことのある方が多いU boj (ウボイ)ですが、カワイ出版のグリークラブアルバム(いわゆる赤本)曲目解説では下記のように記載されていました。
関西学院グリークラブに、古く、1919年頃から伝わっていた名曲で、長く、門外不出の秘曲であった。のちに楽譜が流布されて、日本中の男声合唱団の愛唱曲となったが、原作者も歌詞の意味も不明なまま数十年の時が過ぎた。イヴァン・ザイツ作曲のオペラ「ニコラ・スビク・ズリンスキー」のフィナーレによったものが判明したのは1974年のことである。ここにのせられた歌詞は、フーゴ・バダリッチの作になるクロアチア語の正確なものである。(1979年第7刷[カワイ楽譜時代からの通算第18刷]より転載)
ザイツという作曲家の名前も初めて聞くもので、当然オリジナルのオペラなど知る由もありません。ザイツという作曲家もオペラもすでに忘れ去られてしまったいるのだろうなぁと勝手に思っていました。
今年の正月休み、ホームページの修正を行っていた時に何となく気になってググってみたら、youtubeで見られるではありませんか。
特に下記の演奏は2018年Zagrebでの演奏会形式のものです。
お国(クロアチア)では人気のある作品なのかもしれませんね。
関西学院グリークラブに、古く、1919年頃から伝わっていた名曲で、長く、門外不出の秘曲であった。のちに楽譜が流布されて、日本中の男声合唱団の愛唱曲となったが、原作者も歌詞の意味も不明なまま数十年の時が過ぎた。イヴァン・ザイツ作曲のオペラ「ニコラ・スビク・ズリンスキー」のフィナーレによったものが判明したのは1974年のことである。ここにのせられた歌詞は、フーゴ・バダリッチの作になるクロアチア語の正確なものである。(1979年第7刷[カワイ楽譜時代からの通算第18刷]より転載)
ザイツという作曲家の名前も初めて聞くもので、当然オリジナルのオペラなど知る由もありません。ザイツという作曲家もオペラもすでに忘れ去られてしまったいるのだろうなぁと勝手に思っていました。
今年の正月休み、ホームページの修正を行っていた時に何となく気になってググってみたら、youtubeで見られるではありませんか。
特に下記の演奏は2018年Zagrebでの演奏会形式のものです。
お国(クロアチア)では人気のある作品なのかもしれませんね。
〔訃報〕 三善晃氏が2013年10月4日に永眠されました ― 2013/10/06 10:51
三善晃氏が10月4日、心不全のためお亡くなりになられました。
私がまだ高校1年生で、同じクラスの人間から合唱部(私の高校では音楽部と称していました)に一緒に入ろうと誘われ、新入生歓迎会用に上級生が練習していた「心の四季」の中の「みずすまし」、それも合唱パートではなくてピアノのアルペジオの美しさに惹かれて合唱を始めてみたのです。当時はエリック・クラプトンとか、ELPとか、ディープ・パープルとかいった洋楽を聴いておりまして、クラシックなんか音楽の授業でしか聴かない。合唱だって音楽の授業しか歌ってこなかったし、合唱部に入ってからも「大地讃頌」なんか格好いいねなんて言っているような高校生でした。その年の秋、NHKのたしかFMだったと思いますが、全日本合唱コンクールの実況録音を放送しておりまして、ほかの合唱団はどんな曲を歌っているんだろうという興味もあってエアチェックしてみたのです。課題曲のSalve Reginaやラシーヌ讃歌など外国の曲が並んでいるなかで、その日の放送の唯一の日本の曲が「ほらがいの笛」でした。洋楽を聴いているような高校1年生が突然「ほらがいの笛」を聴いたっていいと思うわけがありません。実際全然わかりませんでした。暗いテーマ、複雑な和音、頻繁に変わる拍子、わけのわからないピアノ。当時の自分には理解を超えた音楽でしたし、その時はけっしていいとは思わなかったのを覚えています。でも何かが気になったんです。その何かは今でも心の隅でもやもやしてなんだかわからないままですが、当時、その何かが高校生を「五つの童画」のLPや楽譜を買いに走らせ、擦り切れるまで繰り返し楽譜を見ながら聴かせることになったのです。そしてきっとその何かが合唱のLPや楽譜の収集に駆り立て、今の自分があるように思います。
三善晃さんの作品や作風・評価などはほかの詳しい方がお書きになられるでしょうから、私は全く個人的な思いを記させていただきました。
肉体は死して朽ち果てるとも「五つの童画」は永遠に不滅です。
謹んでご冥福をお祈りいたします。
私がまだ高校1年生で、同じクラスの人間から合唱部(私の高校では音楽部と称していました)に一緒に入ろうと誘われ、新入生歓迎会用に上級生が練習していた「心の四季」の中の「みずすまし」、それも合唱パートではなくてピアノのアルペジオの美しさに惹かれて合唱を始めてみたのです。当時はエリック・クラプトンとか、ELPとか、ディープ・パープルとかいった洋楽を聴いておりまして、クラシックなんか音楽の授業でしか聴かない。合唱だって音楽の授業しか歌ってこなかったし、合唱部に入ってからも「大地讃頌」なんか格好いいねなんて言っているような高校生でした。その年の秋、NHKのたしかFMだったと思いますが、全日本合唱コンクールの実況録音を放送しておりまして、ほかの合唱団はどんな曲を歌っているんだろうという興味もあってエアチェックしてみたのです。課題曲のSalve Reginaやラシーヌ讃歌など外国の曲が並んでいるなかで、その日の放送の唯一の日本の曲が「ほらがいの笛」でした。洋楽を聴いているような高校1年生が突然「ほらがいの笛」を聴いたっていいと思うわけがありません。実際全然わかりませんでした。暗いテーマ、複雑な和音、頻繁に変わる拍子、わけのわからないピアノ。当時の自分には理解を超えた音楽でしたし、その時はけっしていいとは思わなかったのを覚えています。でも何かが気になったんです。その何かは今でも心の隅でもやもやしてなんだかわからないままですが、当時、その何かが高校生を「五つの童画」のLPや楽譜を買いに走らせ、擦り切れるまで繰り返し楽譜を見ながら聴かせることになったのです。そしてきっとその何かが合唱のLPや楽譜の収集に駆り立て、今の自分があるように思います。
三善晃さんの作品や作風・評価などはほかの詳しい方がお書きになられるでしょうから、私は全く個人的な思いを記させていただきました。
肉体は死して朽ち果てるとも「五つの童画」は永遠に不滅です。
謹んでご冥福をお祈りいたします。
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