間宮芳生さんがお亡くなりになられました2025/01/19 16:32

作曲家の間宮芳生さんが昨年12月11日に肺炎でお亡くなりになりました。

間宮さんの曲を初めて聞いたのは、多分今から50年前、NHKのラジオだったと思います。合唱のためのコンポジション第1番から第2曲と第4曲。演奏は神戸高校合唱部で指揮は平田勝氏。おそらく第24回全日本合唱コンクールの実況録音と思われます。その後何年かして東混のLPを買って聞きました。東混の演奏を聴いた時、第4曲の最後、「ツクセバウキナノタツニモンド」の男声ソロが全然違っていて、その違いが面白いなぁと思いました。この部分はWikipedia(新しいタブでWikipediaを開く)によれば東京都小河内の鹿島踊の「三番叟」からの引用ということです。おそらく東混の演奏はこの「三番叟」に近いだろうと思いますが、だからと言ってその方が正しい、良いということにはならないと考えます。神戸高校の演奏は楽譜をみて、指揮者や団員がいろいろと健闘した結果としての演奏なのでしょう。それにこの曲は編曲ではなくてコンポジションですからね。解釈の多様性がある方が面白いと思いました。

間宮さんというと思い出されるが月刊ハミング(全音楽譜出版社刊第7巻第8号)でバイオリニストの松田洋子さんとの対談の中で話した内容です。「ある人に言わせると、音楽というジャンルは、いまは純粋培養みたいな、無菌植物みたいなものになった。昔は何かもっと、ばい菌も一緒くたにしてどーんとだされるみたいな、いろんな興味を満足させるようなものだった。たとえばスポーツ的な興味、演劇的、視覚的なおもしろさもあるし、そういう世俗的な興味がごったまぜになったものとして、たとえばオペラならオペラというものがあった。夜はそこへ行ってオペラを見て、帰ってきて、何か飲んで、騒いで寝るという、日常生活の中のひとこまとして音楽が存在していたと思う。ところがいまは、スポーツ的なものはプロスポーツにさらわれ、劇場的なものはテレビやミュージカルスにとられ、視覚的なものは映画にというふうにいろんなものが他にとられちゃって、一番つまらないところだけをクラシック音楽は背負わされているんじゃないか...」
こういった思いが合唱曲に限っても例えば鳥獣戯画とか、あるいは合唱のためのコンポジション第8番のようなシアターピースともいえる曲に反映されているのではないでしょうか?

間宮さんの代表作の一つとしては、合唱のコンポジションシリーズ(全17作)があげられると思いますが、自分の心に残っているのは、1969年に作曲された「12のインベンション~日本民謡による」の中の「知覧節」です。実際に音になったものお聞いたのはいつだったのか思い出せませんが、こんな素敵なラブソングが日本にもあったのかと思いました。ところが広く知られている知覧部の歌詞の1番は間宮さん曲も「日本の民謡 九州編」(キングレコード)も同じですが、間宮さんの2番の「チョッホイ、二人で菜畠行けば...」、3番の「雪に白鷺飛ばにゃわからぬ...」の歌詞ははキングレコード盤にはなく、別の歌詞となっています。もう一つ、おそらく地元の方の演奏のようですが、こちらも歌詞はキングレコード盤と同じようです。間宮さんの創作の歌詞ではないはずですし、民謡ですから歌詞もいくつかあるのでしょう。でも思いを寄せている男女の心の機微が色濃く出ている間宮さんの選択された歌詞は素敵ですね。


参考音源
キングレコード盤はこちら
☆ジョージの会☆はこちら

実演で聴いたのは東京混声合唱団第219回演奏会(2009年10月30日)。ゲストにヴァンクーバー室内合唱団をおむかえしての回のアンコールでした。指揮は松原千振氏で、演奏は合同での合唱でした。この時はいつも自分が文化会館の小ホールで座る席に、ホールに到着した時にはすでに荒牧亀太郎氏がお知り合いの方と座られていらしたので、その一つ前に座って聴いたことも覚えています。荒牧氏もすでにお亡くなりになられています。昨年は湯浅譲二さんもお亡くなりになられており、自分が歳をとるごとにだんだんとお名前を存じ上げている方がお亡くなりになられるのはなんとも寂しいものですね。

ご冥福をお祈りいたします。