江戸の町の物売りの呼び声?2023/05/06 09:53

本日(2023/5/6)の朝日新聞 Be on Saturday 3面の「サザエさんをさがして」は、[物売り] 消えていった町の「音楽」というタイトルのコラムでした。

「金魚売りに豆腐売り。この4コマが描かれた昭和30(1955)年当時は、こうした物売りの人々が、東京の町の日常に、まだ存在し得たようだ。(以下略)」(詳細は朝日新聞をご覧ください)

この記事を読んで、1981年3月25日(昔!)、東京文化会館大ホールで開催された東京混声合唱団特別演奏会を思い出しました。その第一部が「民謡への愛の眼なざし ~著名作曲家による」という民謡の編曲物で、コープランド、カステルヌオーヴォ・テデスコ、ヴィラ・ロボス、シェーンベルク、レーガー、プーランク、ストラヴィンスキー、武満徹の曲が演奏され、第二部として「生活(くらし)の音画 ~昔と今」で次の曲が演奏されました。プログラムは 東京混声合唱団自主公演演奏曲目(1976-1981) in 合唱音楽の地平 をご覧ください。


● 作者不詳 The Cries of London ~ロンドンの街の呼び声 (3声カノン)

● Orland Gibbons 作曲 The Cries of London ~ロンドンの街の呼び声


● Clément Janequin 作曲 Voulez ouyr les cris de Paris ~パリの雑踏


● Nicolaus Zangius 作曲 Der Kölner Markt ~ケルンの市場


● John Cobb 作曲 London Street Cries ~ロンドンの街の呼び声


● Luciano Berio 作曲 Cries of London ~ロンドンの街の呼び声


そしてプログラムノートには「東京混声合唱団では今年(1981年)12月に、柴田南雄さんに委嘱中の、わが国の「呼び声」によるシアター・ピースを予定していますので、…(以下略)」(下線筆者追記) と記載されていました。実際の12月演奏会では「布瑠部由良由良」が演奏されていました。もしかしたら「江戸の町の物売りの呼び声」なんていう曲ができていたかもしれませんが、残念ながら構想だけで終わってしまったようです。

ところで、朝日新聞の記事では『東京都「食品衛生関係事業報告」令和3(2021)年版を見れば、「豆腐とその加工品」の行商は15件だった。』とのことです。自分は東京の多摩地区に住んでいますが、夕方になるとバイクに乗ったおじいさんがラッパを吹きながら豆腐を行商しています。いつまでもお元気でお仕事を続けていただきたいですね。たまには買わなきゃ。

坂本龍一さんがお亡くなりになりました2023/04/16 13:41

坂本龍一さんが先月お亡くなりになりました。がんで闘病していることを公表しておりましたね。私自身も癌になり、現在は手術後4年目の経過観察中ですので、坂本さんの話しを聞くにふれ、なんとか進行しないでほしい、頑張っていただきたいと思っておりましたから、非常に残念です。

ところで私にとって坂本龍一さんとは、YMOのメンバーであり、教授であることからスタートしました。そして、戦場のメリークリスマス(1983年日本公開)で音楽を担当するとともに俳優として出演されたり、その後、音楽家として活動しながら、東北ユースオーケストラの活動や、『さようなら原発』一千万人署名市民の会」の呼びかけ人になるなど、市民運動にもかかわりを持つようになったと思います。

ところで、合唱とのかかわりはいうと、1982年東混委嘱による「小説」が発表されました。村上龍さんオリジナルのテキストをほぼほぼ合唱団員が読む形ですすみ、最後近くになって、坂本さん自身のピアノ(多分即興)が入ったものでした。クラシック系音楽雑誌のコンサート評では酷評されていましたが、私自身はおもしろいなと思いましたね。
以下はその時のコンサートプログラムに寄せた坂本さん自身の言葉の一部です。

(前略) このテキストは団員の皆さんに。「読みずらい」、「嫌悪をもよおす」、「何の意味があるのだ」等の反応をひきおこしました。ある意味では当然ですが、別の意味ではこう思われます。例えば「いやらしい」は言葉として何のいやらしさもありません。その証拠に日本語の判らないフランス人に言ってみて下さい。多分なぐられたりはしないでしょう。言葉とは。その言語が流通している共同体のものであり、その共同体とは僕達一人一人の共同性なんだと思います。ぎくしゃくしながらしゃべるのもまたおもしろいのでは…。」 (下線筆者) <東京混声合唱団第90回定期演奏会プログラムより転載>

意図がうまくいったかどうかは別として「言葉の問題」に切り込もうとした作品であったと思います。

さてここで紹介するのは第7回世界合唱シンポジウムのために合唱連盟が委嘱した "Cantus omnibus unus" です。



謹んでご冥福をお祈りいたします。

Dan Forrest さんの "Good noght, Dear Heart"2023/03/21 10:21

男声合唱をやっている友人から、こんな感じの男声合唱曲ってないかなと教えてもらった曲が、Dan Forrest さんの "Good Night, Dear Heart"です。 楽譜を見ながら演奏が聴けるYoutubeは下記です。


ゆったりとしたテンポの美しい曲です。ただこの曲にはすべてのパートに一切変位音(#や♭)がありません。だからと言って古臭い感じはないんです。主三和音に9thの音が足されていたり、メロディーに半音で内声がぶつかったり、フレーズに終わりが属和音の7th sus4 和音で終わっていて、そのsus4音が導音に移行せずに次のフレーズで主和音から始まるなど、工夫されています。

Dan Forrest さんにとっても、この曲はヒットした曲なようで、混声は無伴奏でも、ピアノをつけても演奏出来て、ピアノ付きの女声や男声のバージョンもあります。吹奏楽のバージョンもあります。

個人の感想ですが、無伴奏の混声版が一番良くて、ピアノ伴奏が付くとなんだか通俗的な感じがしてしまいます。

出版は Hinshaw Music。

NHK R1 アート・オブ・グールド番組の周辺2023/03/04 10:20

 この前の日曜日、いつものように風呂に入って防水ラジオのスイッチを入れると、いつものらじらーサンデーが流れてくると思ったら、クラシックのピアノの音楽が流れてくるではありませんか。
 よくよく聞いてみると2022年グールドの生誕90年・没後40年にあわせて放送した特別番組を編集して再放送したものとのこと。ゲストにヤマザキマリさんと宮澤淳一さんが出ておりました。
 グールドファンではない私にとっては、グールドは変人のピアニストというイメージと、どこかにしまい込んであるLPレコードの演奏家でしかありませんでした。
 この番組(Vol.2)の中でヤマザキマリさんの好きな曲としてあげたのが、シェーンベルクのピアノ協奏曲 op.42 の第4楽章でした。数年前までヤマザキマリさんはテルマエ・ロマエの漫画原作者という認識しかなかったのですが、コロナ禍が始まってラジオを聴く機会が増えたら、ゲストとして何回か呼ばれていた「高橋源一郎の飛ぶ教室」だったり、あるいは不定期に放送されるNHK R1 「ヤマザキマリラジオ」での対談などをつまみ食いのように聞いたりして、ヤマザキマリさんて幅広いことに関心がある方なんだなぁと、認識を改めています。
 またグールドは映画「砂の女」が好きだったとのこと。ここでもヤマザキマリさんは「グールドにとってピアノは砂の粒子のようなものではなかったのか。それ(砂)に完全に拘束され、囚われ、そこからもがいてももがいても脱出できない。...」というようなことを言っていました。こういう考えが言えるなんてすごいなぁ。

 明日(2023年3月5日の午後8時過ぎまでしか聞き逃しがきけませんが、興味を持たれたら聞いてみてください。


 グールドは合唱曲も作曲しています。ググってみれば見つかりますが、楽譜を見ながら音が聞けるYoutubeを紹介します。出版はG.Schimer。

ウクライナ侵攻 1年2023/02/24 22:25

ウクライナ侵攻が始まってから1年経ちました。
ムソルグスキーの展覧会の絵 終曲の「キエフの大門」がロシアではなくウクライナの都市だったなんて。それもキエフはロシア語で、ウクライナ語では「キーウ」というんだって。遠い国の話で知らないことがいっぱいありました。

テレビやラジオで関連する番組が放送されました。
自分が聞いたなかで、TBSラジオの荻上チキ Sessionにゲストで出演した金井真紀さんの言葉(入管法改悪に関する話として)「自分も、軍隊に入れば敵を殺せるようになるし、入管の職員になれば外国人を軽んじるのが当たり前になる。…人間は組織にいたらそうなってしまう生き物なんだ」

NHK R1 のジャーナルクロスで、キーウで被災者支援を行っているウクライナ人の方の話(日本でロシアレストランを開業している母娘がウクライナ人を雇って支援している話に対して)「すごくいい、うれしいエピソードだと感じますますが、一方で現地にいて毎日ミサイル攻撃があっていつ死ぬかわからない状況では、安全なところでウクライナ人と仲良くしたいという気持ちは軽いものと感じる。自分の命がいつ奪われるかという状況に置かれればまた違った意見が言えるようになるかもというのが本音」という話もありました。
思い言葉だなぁ。でも何もしないよりは、自分の頭で考えて、やりたいと思ったことをやるしかないのですね。
放送の抜粋だけではお話しされた方の真意が伝わらないので、ぜひ タイムフリー "荻上チキ Session"聞き逃しサービス "ジャーナルクロス" で全部を聞いてみてください。どちらも聞けるのは本放送から一週間までなので3/3までです。

さて、Silvestrovさんの"Prayer for the Ukraine" (ウクライナへの祈り)を聞きましょう。演奏はキーウの合唱団です。


出版はBelaieff。